コラム

緩和ケアは終末期医療という誤解。本当はがん診断時から始めるもの

日本緩和医療学会が主催する講座、「もっと知ろうよ!緩和ケア」に参加し、同学会の理事長、緩和ケア認定看護師、緩和ケアセンター専任薬剤師、がん相談支援センターソーシャルワーカーの4名による講演を聴講しました。

まず緩和ケアにどんなイメージを持っていますか。治療ができなくなったときから始めるもの、と思っている人は多くいます。実際は、緩和ケア=終末期医療ではありません緩和ケアはがんと診断されたときから取り入れ、苦痛を和らげて療養中も自分らしく生活できるように支えていくためのもの。WHO(世界保健機関)やがん対策基本法でもそのように定義されています。身体的な痛みだけでなく、不安、気持ちの落ち込み、イライラ、うつなど精神的な苦痛のケアにも一役買います。しかし悲しいことに、緩和ケアは誤解の宝庫。痛みを和らげる医療用麻薬についても、覚せい剤と同じで中毒性がある、長期間使うと効果がなくなる、余命が縮む等々、誤解は尽きません。医療のために開発された医療用麻薬は覚せい剤とは別物、中毒性はありません。こうした誤解が生まれるのは、よく知らないからであり、それでいて知ろうとしないから。知る努力は、よりよい治療を受けるために必要だと感じました。

乳がん治療中も、抗がん剤やホルモン剤を使った薬物治療中は様々な変化が体に現れ、また告知をされたその日から不安や不眠に悩まされる人もいます。苦痛を感じたそのとき、あなたはどうしますか。我慢していませんか。日本人特有の感覚なのか、我慢を美徳と考える患者さんはとても多いそうです。苦痛に耐えられないのは弱い人間だと自分を責め、ツラいと言えば治療を打ち切られてしまうと思い歯を食いしばってしまいます。では、苦痛を我慢するとどうなるか。ベッドから起き上がれず一日横になって過ごしたり、休職せざるを得なかったり、QOL(Quality Of Life=生活の質)が落ちるだけでなく、治療を続ける体力と気力を奪われることも。

講演の中で印象的だったのは、「緩和ケアは、患者さんが苦痛を訴えるところから始まる」という言葉。我慢が立派ではなく、「助けてほしいと言えることが、本当の自立」という一言にもハッとさせられました。また医療は、医師と患者さんの対等な関係によって紡ぎ出すものであり、医師に気を遣う必要はないとも。患者さんに鍛えてほしいのは、知る力と伝える力。正しい知識をもち、緩和ケアをはじめ使えるサポートをうまく利用して治療を完走してください。

緩和ケアの正しい知識、受けられる場所、必要な医療費などについて

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