コラム

命を守るための代替療法との上手なつきあい方

がんを治すには、標準治療が用いられます。標準治療とは、有効性に科学的根拠があり現在利用できる最良の治療法を指します。標準=並みの治療という認識は誤りです。標準治療には、手術、薬物療法(抗がん剤・ホルモン療法など)、放射線療法があります。

一方の代替療法は、食事法、気功、運動療法、ヨガ、高濃度ビタミンC点滴療法、温浴療法などさまざま。体力や栄養状態の改善には効果があるとしても、代替療法のみでがんを治すことは不可能といっていいでしょう。標準治療を行ったうえで、その効果を妨げないやり方で補助的に取り入れるのが代替療法との正しいつきあい方といえます。

先日、知人をがんで亡くしました。自分の価値観で手術を拒み、気功、高濃度ビタミンC点滴療法、温浴療法といった代替療法で治すと、奮闘した末のことでした。西洋医学に頼らず代替療法のみで絶対に治すと頑なだった彼女のまなざしは強く、それは生きたいという強烈なまでの意思の現れと捉え、すでに手術の好機を逃していたこともあり、私は彼女が選んだ道を否定することはできませんでした。否定は、彼女を意固地にさせるだけでなく、生きる希望を奪うことになりかねないと思いました。

怒りを感じたとすれば、「あなたのがんは私の手のうちにある」と言った気功師に対してです。手のうちにある。つまり自分が彼女のがんをコントロールして治せるという、根拠のない効果と自信と希望に。

科学的根拠のない代替療法に保険は適用されないため、その多くは高額です。すがる思いで選択し、高額だから効果があるような錯覚に陥ることも。病気は、しかるべきタイミングで、しかるべき治療をすることで回復します。抗がん剤がどうしても受け入れられなければ、標準治療の範囲内で第二の手はないか、主治医と一緒にとことん作戦会議をしてほしいと思います。

代替療法は絶対ダメというのではなく、標準治療と併せて上手くつきあいましょう、という話です。

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