コラム

キャンサーギフトがやってこない!?

深刻さが漂う「がん」と、笑顔を連想させる「贈り物」。イメージがかけ離れている二つの単語を組み合わせた、『キャンサーギフト』という言葉に違和感を覚えたことがあります。ツライがん闘病が、ギフトを連れてくるなんて。

退院後、「パートナーに恵まれて結婚しました」「夫が世界一周旅行をプレゼントしてくれました」等々、シンデレラストーリーも実際にあるようですが……。そんなギフトはもらってない!と言う人もいるのでは。私だって、もらってない!しかし、キャンサーギフトとは本来、健康だったときは当たり前すぎて意識できなかった、命の尊さ、周りの人への感謝といった「気付き」を意味する言葉のようです。それなら私もたくさんのギフトを手にしています。誰かのためにという視点が生まれたり、死生観が芽生えたり。人とのつながりがあって自分が居ることに、遅ればせながら気付いたり。私が行っているさまざまな啓発活動も、乳がんを体験しなければ始めていません。自分の役割を少しばかり見付けられたことは収穫です。

しかしながら、病気になると誰しも何かが変わるのでしょうか。変わるべきなのでしょうか。答えは「NO」です。変わってもいいし、変わらなくてもいいと、私は思います。がん経験によって得た新しい役割は前に進む原動力になりますが、家庭や職場で今まで通りの役割を果たし、病気以前の日常を取り戻すこともかけがえのないギフト

病気になったことに、無理やり意味を見出す必要はありません。意識的に意味付けしよう思う間は、まだ病気に捉われている証拠。がんになったことが人生の通過点と思えるようになると、意識が「今」に向いて過去にこだわる暇はなくなります。病気を機に立ち止まる時間ができたこともキャンサーギフトと考えるなら、がんのその後をどう生きるかよく考え、悔いのない人生の流れを自分でつくっていきたいものです

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