コラム
生き残ってごめんなさい。「サバイバーズギルト」に苦しむ人へ
命に関わる危機を生き抜いた人が、その幸運に対して抱く自責の念を「サバイバーズギルト」と呼びます。災害や戦争の経験者に多く、病気でもこのような罪悪感にさいなまれる人がいます。入院中に同室でよくしてくれたあの人は亡くなり、「自分だけ生き残った」。亡くなった人の分まで社会の役に立ちたいが、「思いに結果が伴わない」とふがいなさを責める場合もあります。
病気の克服は喜ばしいことですが、闘病を通して知った様々な現実や、わき上がった感情を抱いて生きなければならないのもサバイバーの現実です。サバイバーズギルトという罪悪感も、命の尊さを痛感したからこそ抱いてしまう感情でしょう。
周りから見れば抱きしめたいくらい頑張っていても、サバイバーズギルトに陥る人は自分を褒めること、認めることが苦手。亡くなった人と生き残った自分を切り離して、一度、思い切ってあなたの人生を生きることを最優先してほしいです。人生を謳歌する権利は、病気になっても奪われません。自分を責めた先に前向きな未来は生まれず、誰かのために行動するときも、そこに自己犠牲があっては追々辛くなるだけ。自分に与えられた時間を大切に生きられてこそ、初めて人を思う気持ちの余裕や優しさが生まれます。また、社会のために行動したいと思った時点で一歩を踏み出しているので、「思った」という事実と、思いが結果につながるまでのプロセスにも、尊さを見出してほしいです。
自分の命の価値を、自分自身で下げることがないように。「サバイバーズギルト」に苦しむ人へ。生き抜いてくれてありがとう。